アニメに関わる仕事で絵が下手でも携われる職種と活かせるスキル

アニメ業界には、絵を直接描かずに携われる仕事も多く、作画スキルを必要としない役割もあります。

この記事では、作画以外の業務でアニメ制作に関われる職種を紹介します。あわせて、アニメ業界で評価されやすいスキルや、就職を目指す際に整理しておきたいポイントも解説するので、アニメ業界で働きたい人は、ぜひ参考にしてみてください。

アニメ業界には、作画工程を担当しない職種として、制作進行（制作管理）やCGアニメーター・3Dモデラー、音響、編集、マーケティングなどが挙げられます。これらの職種は、業務内容の大半が作画以外の工程で構成されている点が特徴です。

そのため、作画スキルを必要としない 役割に関心がある人や、絵を描く業務以外の形でアニメ制作に携わりたい人にも選択肢が広がります。

ここからは、代表的な職種ごとの役割と特徴を整理して見ていきましょう。

制作進行・制作管理｜アニメ制作の現場を支える職種

制作進行（制作管理）は、アニメ制作全体のスケジュール管理や素材の受け渡し、各部署との調整を担当する職種です。放送日に間に合わせるための進行管理や、アニメーターが制作した原画の確認・受け渡しをはじめ、近年ではデジタル化に伴いカットデータやレイアウトデータなどのデジタル素材の管理も担当します。

作画スキルは業務内容に含まれませんが、工程管理力やコミュニケーション力、状況に応じて対応を調整する力が重視されます。アニメ制作では複数の工程が同時に進むため、全体の進行状況を把握しながら制作体制を整える役割を担う職種です。

以下の記事では、アニメの制作進行の仕事について詳しく解説しています。気になる方は、ぜひご一読ください。
≫アニメの制作進行ってどんな仕事？キャリアプランや年収、仕事のポイントを解説！

CGアニメーター・3Dモデラー｜デジタル技術で表現を広げる職種

CGアニメーター・3Dモデラーは、コンピューターグラフィックス（CG）を用いて映像や立体モデルを制作する職種です。CGアニメーターはキャラクターや背景の動きをデジタル上で表現し、3Dモデラーは人物・背景・小物などのモデルを構築します。

これらの業務では作画スキルは必須ではありませんが、「Blender」や「Maya」などのCGソフトを扱う技術、形状を立体的に捉える力、細部を観察する力が求められます。近年は、アニメ作品でも3DCGを活用した表現が増えており、CG制作に関わる職種の需要が拡大している分野です。

ただし、CGモデラーやアニメーターとして高品質な表現を行ううえでは、デッサン力や立体的な造形感覚など、基礎的な美術スキルが大いに役立つことを理解しておきましょう。

音響・編集・マーケティング｜アニメ作品を多角的に支える職種

アニメに関わる職種には、音響、編集、マーケティングなどの専門領域があります。これらの仕事は作画工程とは異なるため、絵を描くスキルを必要としない点が特徴です。

音響エンジニアは、声優の収録や効果音・BGMの制作を担当し、作品全体の音表現を整えます。編集職は、映像・音声・効果音などの素材を統合し、作品を最終的な形へ仕上げる工程を担当します。

マーケティング（宣伝）は、完成したアニメを届けるためのプロモーション活動を行い、作品の認知拡大を支える役割を担います。これらの職種は制作の最終工程や作品の発信に関わり、アニメ制作を多面的に支える領域です。

アニメ業界では、主に以下のスキルが評価されます。

✅コミュニケーション力
✅全体を見渡せる力
✅計画力・責任感
✅情熱・最後までやり抜く力
✅デジタルツールとPCの基本スキル

以下では、それぞれのスキルについて詳しく見ていきましょう。

チームで協力して作品を完成させるコミュニケーション力

アニメ制作は、多くのスタッフが協力して進める業務であり、周囲と円滑に情報をやり取りするためのコミュニケーション力が求められます。

制作現場では、監督・演出・作画・音響など複数の担当者が連携しながら制作工程を進めるため、相手の意図を正確に理解し、必要な情報を共有する姿勢が重要です。

また、予定の変更を早めに伝える、判断に迷う場面で相談するなど、制作進行に必要な情報を適切なタイミングでやり取りする能力も求められます。多職種が同時に作業を進める環境では、こうしたコミュニケーションが制作の進行を支える要素になります。

アニメ制作の流れを理解し、全体を見渡せる力

アニメ制作には、企画・脚本・絵コンテ・作画・撮影・音響・編集など多くの工程があります。

複数の工程が並行して進むため、どこかで作業が遅れると制作全体の進行に影響するケースもあるでしょう。このような環境では、担当業務だけでなく制作全体の流れを把握する視点が求められます。

例えば音響を担当する場合、編集工程で必要となる素材を期日までに準備することで、後工程の作業が進めやすくなります。各担当者が工程全体を意識して行動することで、制作の負担を分散しやすくなり、結果としてスケジュール管理がしやすい体制につながるでしょう。

制作の流れを俯瞰しながら動けることは、アニメ制作における業務遂行に役立つスキルの1つです。

スケジュールや作業を管理する計画力・責任感

アニメ制作は複数の工程を期限に合わせて進める必要があるため、計画的に作業を進める力が重要になります。先述した通り、工程が連続している制作環境では、1つの遅れが後工程に影響するケースがあります。

そのため、時間管理や段取りを意識しながら業務を進めることが欠かせません。突発的な修正や差し替えが発生することも多いため、トラブル対応の時間を見越してスケジュールを構築できることは、制作進行に役立つ要素の1つです。

作品づくりに対する情熱と最後までやり抜く力

アニメは制作期間が長く、地道な作業も続くため、「粘り強く続ける姿勢」や「諦めない気持ち」が欠かせません。

特に、納品直前やトラブル発生時は対応が長時間に及ぶこともあり、単に業務として割り切るだけでは意欲を維持しにくい場面もあります。ただし、近年は労働環境の改善やデジタル化による効率化が進んでおり、計画力やチームでの連携によって、より持続可能な働き方を目指す動きが強まっています。

一方で、アニメが心から好きな人や「自分が関わった映像で誰かを感動させたい」と思う人は、その気持ちが原動力となって困難な場面も前向きに乗り越えられます。

こうした熱量の高い人ほど自己研鑽にも積極的に取り組むため、アニメ業界では「作品づくりへの情熱」が大きな強みとして評価されるでしょう。

デジタルツールを扱う技術と基礎的なPCスキル

アニメ制作ではデジタル作画や3DCG、編集ソフトを使う工程が増えているため、デジタルツールを扱える人は採用時に高く評価されます。PhotoshopやBlender、Mayaに慣れている場合は、作業効率が上がり、表現の幅も広がるでしょう。

絵を描く職種でなくてもパソコンを使う機会は多く、基礎的なPCスキルは十分なアピール材料になります。

また、動画編集やデザイン制作、SNS運用などのアルバイト経験を通して、デジタルツールに慣れることも可能です。映像づくりの感覚や情報発信の視点など、アニメ制作に活かせる力を得られるでしょう。

「絵を描くのが苦手でもアニメ業界で働きたい・活躍したい」と考えている人は、以下の2点を意識しておくことが大切です。

✅得意なことを活かせる仕事を見つける
✅自分の強みや弱みを把握する

これらを押さえておくと、目指す方向性が見えやすくなります。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

得意なことを活かせる仕事を見つける

アニメ制作には多様な仕事があるため、絵を描かない職種でも十分に活躍できます。まずは自分の「得意」を活かせる領域を整理してみることが大切です。

例えば、人とやり取りすることが得意な人や、作業の段取りを整えるのが得意な人は制作進行に適性があります。また、アイデアを考えることが好きな人は、マーケティングや宣伝の分野で能力を発揮しやすいでしょう。

絵が苦手でも携われる仕事は多いため、自分の強みを踏まえて候補となる職種を検討してみてください。

自分の強みや弱みを把握する

アニメ制作は人との連携が欠かせない業界のため、「この人に任せれば安心できる」と評価されると、絵が得意でなくても現場で信頼される存在になれます。

几帳面さや調整力など、制作工程で役立つ強みが自分にある場合は、その力をさらに伸ばすことでチームへの貢献度も高まります。

強みを把握するには、自己分析が有効です。弱みも整理しておくと、アニメ会社の面接で長所や短所を質問された際に対応しやすくなります。

アニメ業界を目指す際はわからないことが多く、不安を抱く人もいるでしょう。

最後に、「未経験でも働けるのか」という疑問をはじめ、アニメ業界の年収や将来性に関するよくある質問について紹介します。

未経験でもアニメ業界で働ける？

アニメ業界には「絵を描かない仕事」も多く、コミュニケーション力や熱意、責任感があれば未経験から挑戦できる職種もあります。

例えば、前職で培ったコミュニケーション力を活かし、企画や制作管理を担当する企業を志望する道もあります。

人気の高い業界ではありますが、制作本数の増加により人材不足が続いており、未経験者を受け入れている企業も見られます。まずは「未経験可」と記載された求人から探してみるとよいでしょう。

アニメ業界の年収は？

アニメ業界の年収は、およそ420万円です。

一般社団法人日本アニメーター・演出協会（JAniCA）が2023年に実施した調査によると、アニメ制作に関わる人の平均年収は455.5万円、中央値は422.5万円という結果が出ています。
≫参照元：一般社団法人日本アニメーター・演出協会（JAniCA）｜アニメーション制作者 実態調査2023

中央値のほうが実態を反映しやすいため、アニメ業界の年収は420万円前後と理解しておくとよいでしょう。

なお、年収はスキル・経験・担当職種によって大きく変動するため、あくまで参考値として確認しておくことが大切です。

アニメ業界に将来性はある？

国内外でアニメの需要が増加しており、それに伴って産業規模も拡大しています。

2024年のアニメ産業市場は3兆8,407億円となり、前年比114.8％を記録しました。この拡大には、アメリカやアジア圏との取引増加が影響しています。

制作工程のデジタル化が進み、3DCGを活用した表現が増えている点も成長を後押ししています。技術面の進歩と海外市場の拡大が続いていることから、アニメ業界は今後も発展が期待できる分野といえるでしょう。

自分の絵に自信がない人でも、制作進行や3Dモデラー、編集など、アニメ制作に携われる仕事は多数あります。

現場ではコミュニケーション力や責任感が重視されるため、これらの強みを持っていれば未経験から挑戦できる可能性があります。

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